翻訳アプリや翻訳機による機械翻訳(自動翻訳)の精度は、昔と比べて格段に上がっています。
google翻訳はその代表的なもので、日々進化を続けています。
また、「ChatGPT」のようなAIも登場しています。
そのため、このままAIが進化を続けたら、将来の英語学習の必要性や、これまで学んだことが無駄になるのかという疑問もチラホラ見られます。
・機械翻訳最大のメリット
・機械翻訳を使いこなすには英語学習が必要
・機械には得手不得手がある
・人間にしかできないことがある
・コミュニケーションにおいて機械を挟むのは不利
・現状の機械翻訳の精度は全面的に信頼できるほど高くない
・英語を使わない人は完璧な翻訳機ができても使わない
・英語学習というものは無くならい
・英語学習の必要性は今と変わらない
・AIが進化したところで個人の英語能力には影響がない
この記事では、以上のことを深掘りしていこうと思います。
- 機械翻訳のメリット
- 機械翻訳の得意分野
- 機械翻訳の不得意分野
- 機械翻訳のデメリットと苦手なこと
- 機械翻訳を信頼するには精度が足りない
- 機械翻訳は英語を学ばないと正しく使えない
- 機械はコミュニケーションの壁になる
- AI時代の英語学習の必要性は今と変わらない
- 機械翻訳と共存する生き方
- もし完璧な精度の翻訳機ができたら
- 機械翻訳と英語学習の要点まとめ
機械翻訳のメリット
機械翻訳の最大のメリットは、その言語が分からなくても言葉の意味を理解できることです。
文章をコピペすれば一瞬で翻訳された文章が出てきて、さらに音声翻訳でも似たようなことが可能です。
しかも今はカメラで文字を映すだけで翻訳できる画像翻訳ツールも登場している時代です。
これは外国語→日本語という受け手だけではなく、日本語→外国語という伝える側のどちらも可能です。
今は Twitter や YouTube のコメント欄にも翻訳機能が付いているため、簡単に翻訳が可能です。
そのようなSNSやサイトだったり、ちょっとした旅の会話などは、多少不自然な所があったとしても、大枠は理解できます。
この「言語を知らなくても通じる」が機械翻訳という文明の利器の一番の特徴です。
機械翻訳の得意分野
機械翻訳が得意な分野は、膨大な情報量を蓄積できるところにあります。
普通の人が辞書を丸ごと覚えるのは実質不可能ですが、機械には可能です。
しかも、入力すれば意味が瞬時に変換されるのはデジタルの強みです。
また、google翻訳のように、スペルチェック機能が付いているものもあり、ミスがないかを簡単ながらチェックすることも可能です。
つまり、機械翻訳は翻訳機としてだけではなく、辞書的な使い方も可能ということになり、これもメリットの1つです。
特に専門用語や高難易度の単語、単語をド忘れした時に非常に便利です。
翻訳機は勉強の補助ツールになる
辞書的な使い方以外にも、英語学習の補助ツールとして使うこともできます。
例えば、文章を読んでもイマイチ理解できない時や、何の文法が使われているのか分からない時。
その文章を翻訳機に入れると、訳し方のヒントが得られます。
これは英語学習においての補助ツールとしてとても便利です。
機械翻訳の不得意分野
逆に機械の不得意分野は「人間ではない」という点です。
例えば、誰かと会話をする時。
人はお互いの言葉、抑揚、相づち、表情、ジェスチャーなど、色々なものを使い、コミュニケーションを取ります。
言語は人間同士が意思疎通をするために必要なツールの1つです。
そして、言葉というツールには、文脈やニュアンス、文化などが染み込んでいます。
機械翻訳がそれらを把握するのは難しいです。
プログラムされていない限り、言葉遊びやギャグを理解するのも難しいのが現状で、言葉通りに訳した結果、何のこっちゃ分からない翻訳結果が出ることが多々あります。
Google翻訳が謎翻訳で遊ばれているのも、その一例です。
現在技術者が取り組んでいるのが、言葉以外の様々なものから複合的に判断するAI技術(マルチモーダル)です。
人間は五感から情報を得ているように、将来的にはAIも複合的な情報からマルチモーダル学習をし、翻訳できるようになるかもしれません。
が、現状ではなかなか難しいようです。
機械翻訳のデメリットと苦手なこと
以上のように、機械翻訳のデメリットは文字通りの翻訳になってしまう点。
そして、それらを加味した場合の機械翻訳の精度や信頼性に欠ける点が最大のデメリットです。
※翻訳精度については後述します。
もう少し詳しく見ると、機械翻訳が苦手としていることは主に3つあります。
・文化の壁を越えること
・言葉のニュアンスと文脈を理解すること
・直訳ができない言葉を訳すこと
次はこれを1つずつ見ていきます。
文化の壁
文化の壁とは、その言葉が持つ背景です。
例えば、日本語で「すみません」と言った場合、
・すみません(謝罪)
・すみません(ありがとうございます)
・すみません(ちょっといいですか?)
・すみません(そこ通ります等)
など、様々な意味が考えられます。
これは「すみません」という言葉の意味と使う状況という日本人の文化が背景にあります。
この「すみません」が「I'm sorry」なのか「Excuse me」なのか、それとも別の何かを判断するには、言葉以外の判断材料が必要です。
日本人ならどの使い方も状況から理解でき、それが文化でもあります。
しかし、機械がそれらを判別するのはほぼ不可能で、別な言い回しを考える必要があります。
ことわざや言い回しの難しさ
ことわざや言い回しも同様です。
ことわざや言い回しには文化的な背景があり、使い所というものが存在します。
つまり、日本語を学ぶということは日本について学ぶことであり、英語を学ぶということはその国々について学ぶことです。
海外は宗教的な要素や日本人にはあまり馴染みのない要素も多く、言葉の持つ背景を理解してこそ、その言葉の本当のニュアンスを理解することになります。
それは辞書を引くだけでは得ることはできません。
そしてそれらもまた、機械では翻訳できないものです。
ニュアンスと文脈
この言葉(文章)は相手が真面目に言っているのか、ギャグで言っているのか、言葉遊びなのか。
それが分からなければ、会話が続かなかったり、誤解が生まれたり、見当違いのことを言ってしまったり。
言葉のニュアンスや文脈を理解するためには、その場の状況や言葉・文化の知識が必要になってきます。
例えば、映画で自分の車が大破した時や何かを失敗した時、アメリカ人はよく「Perfect.」や「Great.」などと言ったりします。
これはもちろん皮肉であり、わざと逆のことを言う文化でもあります。
それを知らなければ、ただ流して観るかもしれません。
逆に知っていれば、海外作品を見ている時にその皮肉が出ると「出た」と(自分だけかもしれませんが)思います。
また、SF映画の中で、人間がロボットに対してギャグを言ったけど、ロボットはその言葉の含みを理解できず文字通りに捉えてしまい話が噛み合わず、人間側が「もういいよ」となるシーンのようになりかねません。
英語と日本語は直訳できない
日本語に直訳できない英単語やフレーズが多くあります。
逆に英語に訳せない日本語も多くあります。
何故かというと、そもそも日本語と英語はまるで違う言葉だからです。
よって、その言葉の持つニュアンスを汲みながら適切に訳すことは機械翻訳には難しいです。
物理的なデメリット
少し趣が変わりますが、機械翻訳のデメリットとして、必要なときに使えなくなったら終わりです。
スマホなら充電が切れたり、アプリの不具合で使えなくなっていたり。
使っているアプリがサービス終了する可能性もあります。
視力の悪い人が眼鏡があるから大丈夫と言ったり、スマホに記録されているから電話番号を覚えていないのと同じようなものです。
眼鏡やスマホが壊れたら、どうしようもありません。
必要性や緊急性がある状況ほど、使えなくなった時の恐怖があります。
機械翻訳を信頼するには精度が足りない
機械翻訳は、一時期と比べて格段に進化しました。
しかし現状の不安要素として、全面的に信頼するにはまだまだ精度が足りない点があげられます。
これは実際に機械翻訳に文章を入れたことのある人なら経験があると思います。
「この文章を訳せるのか」というのもあれば、「何故これが訳せないのか」というものが混在しています。
英語の簡単なイディオムが単語通りに訳されて意味不明になったり、日本語を英語にしようとしても「何か違くない?」となったり。
慣用的な表現や諺すら、きちんと訳されない場合も多く見られます。
以前、Google翻訳で、英語の否定文から否定語を抜いても、全く同じ日本訳が表示された経験があります。
受け身の文章が受け身になっていなかったりもします。
音声認識や Youtube の字幕機能の精度
音声認識や Youtube の字幕機能も同様です。
試しに日本語の動画で日本語の字幕を付けてみると、日本語を成していない部分が散見されます。
それと、グローバル化ならではのデメリットもあります。
2つの言語(日本語の会話の中に英語が混じるなど)の翻訳はグチャグチャになりがちな点です。
これはカタカナ英語や本来の英語の意味とは違う日本語英語が混じっている日本語は特にデメリットかもしれません。
このように、いくら技術やAIが進化していると言っても、全面的に信頼を寄せることはまだできません。
機械翻訳は英語を学ばないと正しく使えない
機械翻訳が進化しても英語学習が必要な理由の1つは「英語を勉強していないと機械翻訳を正しく使えないから」に尽きます。
翻訳が間違っていると気付けるのは、英語を勉強しているからです。
要は、機械翻訳がきちんと翻訳されているのかを知るために英語学習が必要なのです。
これは「調べればネットに書いてあるのに何で勉強するの?」に近いかもしれません。
その情報が正しいかを知るためや、自分の頭で考えるためにも勉強が必要になります。
他にも、自動翻訳や機械翻訳が面白翻訳(誤訳や謎の文章)としてよくネット上でネタにされます。
そして、面白翻訳だと分かるのはその言語の知識があるからです。
全く知らない言語を翻訳しても、それが面白翻訳になっているか、果ては正しく翻訳されているのかすら分かりません。
一番怖いのは「誤解」や「間違った知識」
つまり、英語の知識がなければ、間違いに気付かず、誤解が生まれたことにすら気付かないかもしれません。
その「誤解」が一番怖い要素です。
これはコミュニケーションにおいて特に注意すべき点です。
本来の意図とは違うように受け取られる・受け取ってしまうと、意味を成さなくなるどころか、下手したら大変なことになりかねません。
機械という手順が1つ入ることは、フィルターを1枚通しているようなものです。
伝言ゲームはほぼ必ず失敗するように、フィルターがあればあるほど、伝わり方が変わる可能性も増えていきます。
そして、それらに加え最大の問題点が1つあります。
それは「コミュニケーションにおいて機械翻訳は壁になる」です。
機械はコミュニケーションの壁になる
外国の方とコミュニケーションをする場面を想像してみて下さい。
機械翻訳を使うということは、言語というツール1つを機械に任せることになります。
本来なら 「人間⇔人間」 なのに、 「人間⇔機械⇔人間」 となります。
確かに機械があれば、英語を知らなくてもある程度なら英会話やコミュニケーションも可能です。
が、自分が翻訳機を使うということは、相手にも翻訳機の使用を強いることになります。
アメリカでは「英語を話せる(分かる)のは当たり前」と思う人が少なくありません。
機械翻訳に頼るということは、英語が分からないのは明確です。
そうなると、最初からコミュニケーションを取ろうとしない人もいます。
英語を話せない人に冷たい人もいます。
旅行で海外に行った日本人が誰かと話そうとしたら、あまり英語が話せないと分かった時点で突っぱねられる経験をして精神にダメージを受ける、というのはよくある話です。
機械翻訳では信頼関係を築けない
人と人の間に機械が挟まることで、信頼関係にも壁が生まれます。
翻訳というと、「外国語を訳す」ということに目が行きがちです。
しかし、コミュニケーションは「自分の意見を言い、相手の意見を聞く」ことが大事です。
翻訳を機械に頼ると、自分の意見を言うために機械を使い、相手の意見を聞くためにも機械を使うことになります。
そのような状態で、すんなりと信頼関係を築くのは難しいです。
更に、本当に自分が言いたい事が伝わっているのかという、正確性の問題も出てきます。
機械と言葉では印象が異なる
想像してみて下さい。
たとえカタコトでも、勉強した日本語を一生懸命話す外国人がいたら、こちらもきちんと聞こうとします。
SNS上でも、カタコトと、ゴリゴリの翻訳感丸出しとでは、やはり印象は異なります。
もし間違っていたとしても、助け舟を出したり、相手が言わんとしていることを感じることができます。
そうして意思が通じた時に、信頼が生まれます。
それができるのは、人間同士だからです。
好きな歌手やスポーツ選手がいたでもいいです。
自分好みのイケメンや美女がいたでもいいです。
話してみたい相手がいた時、機械を通すのか、自分の口で直接話すのか。
ビジネスにおいても、プレゼンや取引で信頼関係を築けるのはどちらか。
AI時代の英語学習の必要性は今と変わらない
以上見てきたように、英語学習は「英語を正しく使うため」と「機械翻訳を正しく使うため」、そして「コミュニケーション」に必要です。
つまり、AI時代においても英語学習の必要性は今と変わりません。
英語能力を図るTOEIC、英検、TOEFL、IELTSなどの試験を受ける必要性も無くなりません。
AIが進化したところで、その人の英語の能力には全く関係がないからです。
仮に高性能の翻訳機ができたとしても、既に翻訳機を全面的に頼っている人は最初から英語の勉強しません。
逆に英語ができる人や勉強中の人は、翻訳機を補助的な使い方をしており、完璧な翻訳機ができてもそれは同じです。
つまり何が言いたいのかと言うと、機械翻訳がどうなろうと、英語を勉強する人はするし、しない人はしないという構図は今と変わらないということです。
よって、AIがどれだけ進化しても、英語ができない人と英語ができる人の状況は現在と変わらないことにもなります。
「英語を勉強してどうなりたいか」という目標を持っている人は勉強し、機械で事足りている人は勉強をする必要がないのも事実です。
機械翻訳と共存する生き方
これからも進化し続けるであろう機械翻訳やAIとどう向き合えばいいのかというと、共存であると私は考えています。
これは書面で行っていた作業をパソコンに頼るようになったのと同じです。
機械には機械が得意なことを任せて、人間は人間ができることやったり、機械を活かします。
・膨大な情報量の蓄積
・スペルチェック
・翻訳の補助
・翻訳機やAIの特性を活かす
・言語をツールの1つとして使う
・言葉の文化的背景を学ぶ
・コミュニケーション
このように、適切に使い分けをすることがAIと英語学習のバランスを取ることに繋がります。
機械翻訳はツールの1つ
機械翻訳はツールであるので、そのツールを活かしての英語学習も効果的になります。
紙の辞書→電子辞書→PC上で検索できる辞書、という進化のように、機械翻訳はその先の学習補助ツールとして使えます。
もちろん、計算を電卓に任せるように、翻訳を機械に任せるのも選択肢の一つです。
しかし数字と違い、翻訳の正確性の問題は必ず出てきますし、どれだけ英語と触れる機会があるかによって、結局は英語の勉強の必要性や学習量は変わってきます。
先述のように、精度の高い翻訳機の登場により、英語の知識が全く無い人でも英語をツールとして使えるようになってきています。
が、やはり超完璧な翻訳機ができるまでは、あくまで翻訳の補助というツールの1つに過ぎません。
もし完璧な精度の翻訳機ができたら
将来、完璧な精度で翻訳できるようになったらどうなるでしょうか。
言葉のニュアンスやギャグも理解できるようになったら。
文字には出ていない裏の意味まで翻訳できるようになったら。
もしそうなったら、翻訳家や同時通訳者は廃業になるかもしれません。
しかし、必ず失われないものがあります。
それは英語を学ぼうとする人と、人と人とのコミュニケーションです。
完璧な翻訳機ができたとしても、英語を学ぼうとする人はいなくならないはずです。
人間として生きている以上、機械ではなく「生の声」や「人と人」が何よりも大切です。
仮に旅行中にしか英語を使わないとしても、店員さんや宿泊地で誰かと話す機会はあります。
日本の店員と客のやりとりは機械的、マニュアル的と言われます。
しかし、海外ではちょっとした日常会話などのやり取りがあることが多々あります。
道端で全く知らない人に「それいいね」と持ち物について話しかけられることもあります。
その時、何も反応できなかったり、逐一機械に頼るとどうでしょう。
仮に完璧な翻訳機ができたとしても、
・国の文化を理解すること
・コミュニケーションツールの1つ
・信頼関係を築く
・言語を学ぼうとする人たち
というのは無くならず、英語そのものを理解するために英語の勉強をすることも依然として存在し続けるはずです。
結局、英単語やフレーズ、言葉のニュアンスを理解しつつ言語として使いこなすには英語の勉強が不可欠、ということになります。
機械翻訳と英語学習の要点まとめ
・機械翻訳の最大のメリットはその言語を理解できるようになること
・機械の得意分野は情報量の多さ
・機械と人間それぞれ得手不得手、メリット・デメリットがある
・機械翻訳をツールの1つとして活用する
・コミュニケーションは無くならない
・機械翻訳を信じるのはまだ危険
・言語を学ぶことは文化を学ぶこと
・英語を知ること自体に英語学習の意味がある
・英語を学ぶ人と学ばない人の状況は変わらない
・AIがいくら進化しようと、その人の英語能力には影響がない
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